PROJECT

募集テーマ

海中の藻場の現状を効率的に把握したい!

テーマ紹介

募集中

ポイント

01

解決したい課題

藻場の種類(アラメ類、ホンダワラ類・アマモ類)毎の面積や被度を把握するための潜水調査は、予算と期間の制限から範囲と頻度に制限がある。

02

想定する実証実験

潜水調査の結果とグリーンレーザー搭載ドローンやカメラ搭載水中ドローンといったデジタル技術による調査結果との比較による藻場の推定面積等の比較。

03

実現したい未来

毎年、季節毎の藻場の構成種や面積等を効率的に把握し、調査費用の低減や水産資源の維持、ブルーカーボンを通じた地球温暖化防止に資する。

04

提案企業が得られるもの

ブルーカーボン活動に取り組む民間企業等も増加している中、効率的な藻場の現状把握の手法を確立することで、その技術を他事例への活用が期待できる。

ストーリー

愛知県の藻場の現状は

愛知県の伊勢湾・三河湾の海域には、大きく分けて海草のアマモを主体とする「アマモ場」やコンブ目の海藻であるサガラメやカジメを主体とする「アラメ・カジメ藻場」、ホンダワラ類の海藻を主体とする「ガラモ場」と呼ばれる藻場が分布しています。
これらの藻場は、魚類や甲殻類など様々な有用な水産生物の産卵やふ化した子どもが育つゆりかごとしての機能を持つとともに、アラメやカジメなどの海藻はそれ自体がアワビやサザエなどのエサとなります。また、これらの藻場で生長した海藻は大気中から海水に溶け込んだCO2を吸収・固定する「ブルーカーボン」としての機能も期待されます。
しかし、これらの県内に分布する藻場は高水温化や海域の貧栄養化等の環境的な要因により、全体として減少傾向にあるとされております。そのため、漁業者からはアラメ・カジメ藻場などの回復が強く望まれているほか、社会全体としてもカーボンニュートラルの実現に向けて、藻場の再生が望まれています。
そのためには、まずは藻場の変動傾向やその原因を把握する必要がありますが、藻場調査には多大なコストが必要であり、頻繁に調査を行うことは難しいのが現状です。従って、簡便でコストの少ない藻場の調査手法の開発が必要です。

現在、藻場の調査方法は、大きく分けて次の4つがあります。

①ダイバーが潜水して藻場を観察する潜水調査
②水中カメラなどを用いた船上調査
③音響機器による調査
④人工衛星等を用いた空撮画像による調査

①潜水調査は、ダイバーが調査地点に潜水して定めた側線やエリア内の藻場を観察する手法で、精度は高いものの、調査範囲が狭く、技術的に習熟した調査員が必要なので、コストが嵩みます。
②水中カメラ等を用いた船上調査は、潜水しなくても良いので比較的簡単に実施できますが、高価な機材が必要なうえに、類似した海藻の種の同定までは困難です。
③音響調査による調査は、船舶から魚群探知機やサイドスキャンソナー等の音響測探機器を用いて調査する手法で、海域の透明度が低い場合等でも調査できるメリットがありますが、専門的な機器が必要なことや海藻の種類の特定や被度(海底面を覆う割合)の精度は高くありません。
④人工衛星等を用いた空撮画像による調査では、広域に藻場の面積を把握することが可能ですが、③と同様に海藻の種類の特定や被度の精度が高くないことや、天候等により衛星画像の調整が必要なことがデメリットとしてあげられます。
最近の広域な藻場調査では、①を元データとして④と組み合わせて、広域の藻場の構成種や被度、面積を把握する手法が主流となっていますが、前述したように費用の問題があり、簡単には行えません。
また、藻場の中でも、ホンダワラ類で構成されるガラモ場は、季節的な消長や年変動も大きく、長期的な変動傾向を追跡することが困難です。

今後、行いたいこと

そこで、今回、企業等の皆様に④のみにより藻場の現状を把握する手法の開発およびマニュアル化のご提案をいただけたらと思います。現場としては、藻場の調査を効率的に行うために、AIをもちいて人工衛星画像を解析するなどといったデジタル技術を活用することにより、海域の藻場の面積、構成種、被度を推定する技術を模索したいと考えています。④の手法には地上分解能が低いというデメリットもありますので、グリーンレーザー搭載UAVやカメラ搭載水中ドローンも活用するなど、幅広い手法による課題解決策の中から最善策の発見につなげたいです。
④の調査方法が確立できると、潜水調査に伴う調査範囲の狭さ・コスト高という課題の解決が期待できます。また、企業等の皆様にとっても、④の手法の確立し、その手法をさらに横展開することで空撮画像を用いた分野での活躍領域の拡充にもなるチャンスと考えられます。
なお、今回の実証実験では実証期間やコストを踏まえ、すでに県が保有しているアラメ場の元データと今回の実証実験で④の手法を通じて取得するデータを比較することで効果を検証します。
皆様からのご提案をお待ちしております。

概要

背景 「愛知県藻場ビジョン」に基づき5年毎の藻場のモニタリング(藻場構成種、被度、面積)を実施する計画である。
課題(詳細)
  • 藻場は多くの水生生物の生活を支え、産卵や幼稚仔魚に成育の場を提供する以外にも、水中の有機物を分解し、栄養塩類や炭酸ガスを吸収し、酸素を供給するなど海水の浄化に大きな役割がある。
  • したがって、藻場の現状を把握することは、水産資源の維持増大だけでなく、地球温暖化防止、ブルーカーボンの推進に資するために必要である。
  • 本県海域の藻場は、アラメ藻場、ガラモ場、アマモ場が主な藻場であるが、繁茂時期が異なるなど、それぞれの藻場により特徴があるため適切な調査時期が異なる。
  • 調査方法としては、潜水による目視調査が最も精度高く藻場の現状を把握することが可能である。一方で、潜水調査には多大な費用と労力を必要とし、調査頻度の制限要因となっている。
  • 潜水調査以外の調査方法には、人工衛星、UAV(無人航空機、ドローン等)による調査があるが、精度が低いことが課題となっている。
求める解決策
  • AIやドローンなどのデジタル技術を活用した藻場の効率的な調査方法をご提示いただきたい。例示としては、以下のものが挙げられる。
  • (例示)取得した衛星画像等をもとに、机上調査主体で藻場の構成種、被度、面積を求める。(なお、全ての前述の項目を調査できることが望ましいが、費用や技術面の観点から一部のみの調査でも可)
想定する実証実験内容(詳細)
  • AIをもちいて人工衛星画像を解析するなどといったデジタル技術を活用することにより、海域の藻場の面積、構成種、被度を推定する。
  • 人工衛星画像では地上分解能の低さが一つの欠点であるので、グリーンレーザー搭載UAVやカメラ搭載水中ドローンによる調査も想定される。
  • ※アラメ藻場については、水産試験場が潜水調査を令和7年秋季に実施予定なので、上記実験の結果と比較が可能。
実証実験成功後の発展性
  • 藻場の繁茂状況(事業効果、CO2固定(削減)効果の算定)
  • 調査費用、時間の削減。
  • 調査回数の増加。
  • 地球温暖化対策計画(環境省)に関連する取り組みへの適用。
  • ブルーカーボン活動に取り組む民間企業等も増加している中、効率的な藻場の現状把握の手法を確立することで、その技術の他事例への活用が期待できる。
提案企業に求める専門性
  • 以下の全ての専門性を必ずしも求めるものではなく、一部の技術を活用しての課題解決策の提案も可能です。
  • 画像の解析技術
  • AI技術
  • 海洋調査技術
プロジェクトの進め方
打合わせ方法
  • オンライン打合せ可
  • 船舶(水産試験場所有船舶)による現地視察可
提供可能なデータ・環境等 過去のアラメ藻場の潜水調査結果ほか、水産試験場が保有するデータ。
プログラム終了後の本格導入 実証効果が認められる場合は、現在予定している1回/5年の頻度を高くし、予算化を検討する。

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